子どもの室内撮影で単焦点レンズをオススメしない理由
僕がキットレンズで一眼デビューした頃の経験からの話です。当時、子どもの撮影目的で一眼レフを購入したのですが、さすがにキットレンズだけでは部屋の中でまだ小さかった子どもの被写体ブレを止めきれませんでした。予測不能な動きに加えて言葉も通じない状況です。ISO感度を上げれば止まるには止まりますが、昼間の屋外のような画質が得られないのが不満でした。
そこで、どうにかならないものかと導入したのが明るい単焦点レンズでした。ボディがニコンのD3100だったのでAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを選びました。キットレンズの開放絞りはF3.5だったので2段分の違いです。ISO3200のところISO800で撮影できるので画質面は向上します。ですが、F1.8のため被写界深度(ピントの合う範囲)が浅くなりピントを外しやすく、数人を一緒に映し込みたい場面ではフォーカスポイント以外の人物がF値相応にボケてしまいます。
かと言って絞ればキットレンズと同じような状況(高ISO感度もしくは低SS)に戻ってしまいます。これでは明るい単焦点レンズを買った意味がなくなります。しかも35mm換算で28mm付近で撮影していたのが50mmになるので厳密にはキットレンズ以上に絞らないと同じ被写界深度が得られません。
写真を撮る目的がアルバム用の記録写真だったので、35mm換算で50mmの画角では狭くて周りの状況を含めて全体を抑えきれない場面も多くありました。
自宅のリビングなどでアルバム用の記録写真という目的からすると、35mm換算で28~35mmくらいの画角がちょうどいいでしょう。
それに子どもの動きは意外かもしれませんが本当に速いです。ですから単焦点レンズで動くより、ズームレンズの方が即座に対応できて歩留まりが上がります。子どもの自然な笑顔はリクエストしてもでてこないので、ズームレンズで効率良く撮影しましょう。もしも幼稚園の運動会に行く機会があればプロカメラマンのレンズを見てください。速写力重視の記録写真なのでズームレンズを手にされているかと思います。数を打って速写力を鍛えるようにしてください。
このような事から子どもの成長記録が目的ならシャッタースピードを稼ぐとかISO感度の上昇を抑えるなどを単焦点レンズに求めるのは間違いなのです。
ではどうしたら良いのか?
スピードライトを使用してください。
子どもの室内撮影ではスピードライトを使ってのバウンス撮影が効果的!
写真は光です。足りない光は作り出せばいいのです。光(明るさ)さえあればシャッタースピードは速くなりますし、ISO感度の上昇も抑えることができます。深い被写界深度を得るために絞っても平気です。それに見合うだけの光を生み出せばいいのです。安心してください。スピードライトにはTTL調光と言ってレンズを通った光の量を計算してそれに見合った光を自動で生み出してくれる機能があります。機材任せで適切な露出が得られます。
ただし、直接被写体に向けて発光すると硬い光となって不自然なコントラストを生み出しがちです。まさに「人工光!!」という具合になります。
これをいかに自然界の光に近づけるかということです。自然界の光の王様と言えば・・
太陽ですね!
正面からフラッシュを焚くのではなく、上から降り注ぐ光が”自然”を表現するには必要と言うことになります。
つまりスピードライトの発光部を上に向けて、光を天井に反射させて拡散光で部屋全体を照らせばいいのです。瞬間的ですがこれで疑似太陽の出来上がりです。
これは天井バウンスという撮影方法で、気に掛けることは光を発射する方向くらいです。スピードライトの語句の横に必ず並ぶと言っても過言ではないメジャーな撮影方法です。
百聞は一見に如かず。とりあえず作例を見てください。違いは歴然です。
まず、フラッシュを正面から当てて撮影したものです。
次にバウンス撮影したものです。
いかがですか?
今回はご用意できませんでしたが、人物で比べると違いがさらに顕著に出ます。
この描写ならフラッシュ嫌いな方も満足いただけるのではないでしょうか。
なるべく高画質を維持しつつ、被写体ブレを防ぐ上記の設定ですが、一般的なリビングの明るさからすると、フラッシュなしではアンダー必至です。しかし、スピードライトがあれば問題なく適正露出までもっていけます。足りない光はスピードライトが補ってくれます。この条件ならまず手ぶれはしないでしょうし、被写体ブレもほぼ防げるかと思います。
ハイスピードシンクロ(FP発光)に対応したスピードライトであればシャッタースピードを1/500に上げて撮影すると、小走りさえも止めて撮ることが可能です。スピードライトの負荷が気になるならISO感度を800に設定するといいでしょう。一眼であれば大抵のカメラはISO800までは実用に耐えるはずです。
これで明るい単焦点レンズも必要ありません。キットレンズで高画質に被写体を止めることができます。1被写体だけでなく、絞れば(F値を大きく)立ち位置の違う複数人でもぼかさずに止めることが可能です。
単焦点レンズが悪いわけではありません。レンズ自体の光学性能(描写力)はズームレンズより単焦点レンズの方が上です。ですからスピードライトに単焦点レンズを組み合わせればさらに高品位な写真になるのは間違いないでしょう。
こうなると描写力だけでなく、値段も圧倒的ですね。
光を生み出すスピードライト。使えば使うほどに良さも「光ります」よ!
他にもスピードライトには有用な使い方が沢山あります。まずは天井バウンスから入られて効果を体感してみるといいでしょう。
まとめ
光の足りない室内で動く被写体をしっかり止めて撮影したい場合は
明るい単焦点レンズではなくスピードライト(ストロボ)でバウンス撮影が正解。
- 絞り開放で使うことが条件になるので、ある程度の被写界深度を得たい場合に使えない。
- 室内という狭い空間で全体像を含めた記録写真を想定しているので、画角としては広角な単焦点が良い。ただ、これは初心者が最初に導入するレンズとしては高価で手を出しにくい。
公平を期すために・・スピードライトのウイークポイントも書いておきます。
天井の色の影響を被写体が受ける(色かぶり)。白系なら問題ありませんが、仮に緑や紫とかだとゾンビみたいな顔色になるかもしれません・・。
高すぎる天井、もしくは光を吸収してしまうような構造。吹き抜けなんかもNGです。
こういった天井バウンスが使えない状況では白のプラダンを適当なサイズにカットして(なるべく大きい方が良いです)スピードライトの上空間に沿えて角度を探りつつ光を反射させてください。
ちなみに「プラダン」とはホームセンターで購入できるプラスチックのダンボールみたいな物です。興味がありましたら探してみてください。